音響業界でのアカデミー賞にあたる優れた製品を選ぶドイツ・フランクフルトで開催の Musikmesse「MIPA(Musikmesse International Press Award)」の「ニアフィールド・スタジオモニター部門」を受賞したスピーカーのなかには、そのまま業界スタンダードになって行く製品も数多く存在します。
そのため、毎年とても注目を集め、もちろん「名誉である」ということもありますが、どんな宣伝文句を並べるよりも受賞の実績はユーザーに対して説得力があるため、「Mipa award」を受賞したメーカーのほとんどは、受賞した後、短期間でホームページ上などに受賞したことを掲載します。
COVID-19 のパンデミックにより、Musikmesseは2度中止された後、2022年04月に再開される予定でしたが、残念なことに永久に廃止することが決定されました。
生産完了となったスピーカーもありますが、2007年度 MIPA ベスト・スタジオモニター ADAM Audio「A7」は業界定番となり、モデルチェンジして現在でも販売されています。
MIPA 2013 ~ 2016 受賞スタジオモニター
2016年度のMIPA受賞モニター・スピーカー
2016年度のMIPAにノミネートされたのは「Adam A77X」「Eve Audio – SC203」「Gibson – Les Paul 6 Reference Monitor」で「Adam A77X」が最優秀賞を受賞しています。
前年と違い、3つのモニターは主要ショップでの取扱いはあります。レスポール氏生誕100周年記念を称えた「Gibson – Les Paul Reference Monitor」には4インチ、6インチ、8インチのモデルがあります。
注目は自宅にも取り入れやすいサイズの「Eve Audio – SC203」です。
EVE audio「SC203」が現在でも国内で販売中です。
2015年度のMIPA受賞モニター・スピーカー
2015年にノミネートされたのは「Amphion One18」「Genelec 8351A」「Munro Sonic Egg 150」です。「Genelec 8351A」が最優秀賞を受賞していますが高額です。他のモニターは日本国内の主要ショップで取扱がありません。
2014年度のMIPA受賞モニター・スピーカー
Genelec「M-シリーズ」が受賞
2014年のMIPAのスタジオモニター部門にノミネートされたのは、Genelec「M-シリーズ」、Neumann「KH-シリーズ」、YAMAHA「HS7」の3つのスタジオモニターです。
予想した通り「TEC Awards 2014」をはじめ高い評価を受けているGenelec「Mシリーズ」がスタジオモニター部門の最優秀賞を受賞しました。
MIPAノミネート常連のGenelec「Mシリーズ」は自宅スタジオやプライベート環境での使用を目的に開発されたプロフェッショナル・モニターで、「TEC Awards 2014」をはじめ高い評価を受けています。
詳しくは「Genelec Mシリーズの解説ページ」を見てもらえれば良いですが、1台1台手作りということもあり「M030」と「M040」は高額ですが、場所を選ばずに「Genelec サウンド」を得ることができるのが魅力です。
Neumann「KH シリーズ」とYAMAHA「HS7」がノミネート
2011年にも「KH120A」がノミネートされたNeumann「KH シリーズ」のニアフィールドモニターには2ウェイの「KH120A」「KH120D」と3ウェイの「KH310A」があります。
海外では高い評価を受けていますが、日本国内では、かなり取扱も少なく高額なので、余程のことがない限り、宅録スタジオでのスタンダードモニターにはならないと思います。
一方、すでに国内でも高い評価を受けているYAMAHA「HS7」は、このサイトでも発売当時に、しっかりとした「YAMAHA HS シリーズの特集ページ」を作成しているので、そちらを参照してもらえば、良さが分かると思いますが、これだけコストパフォーマンスに優れたスピーカーは今までなかった気がします。
ただ、前年もコストパフォーマンスに優れたADAM Audio「F7」が受賞しているので、2年連続で低価格スピーカーの最優秀賞受賞というのは考えにくかった感じがします。
最優秀賞を取れなくても、日本国内では「HS5」がElectronic Musician「Editors’ Choice Awards 2014」を受賞していることもあり、今回のMIPAノミネートも後押しして「HS シリーズ」は、しばらくのあいだ宅録スタジオでのスタンダードモニターになると思います。
もちろん、住宅環境にもよりますが、「HS シリーズ」のページでも書いている通り、将来的に仕事レベルでの活動も考えていて、自宅スタジオで完パケレベルのミック&マスタリングを行う方には「HS7」のほうをオススメします。
2013年度の受賞モニター・スピーカー
ADAM Audio「F7」が最優秀賞
Mipa award 2013のスタジオモニター部門にノミネートされた3つのスピーカーはADAM Audio「F7」、Focal「SM9」、PMC「TwoTwo」で、価格の幅がかなりあります。
そんななか、最優秀スタジオモニターに選ばれたのは、現在「A7X」が定番モニターとなっているADAM Audio「F7」です。
この、ADAM Audio「F7」は国内でもペアで6万円前後と、非常にコストパフォーマンスに優れている久々に紹介しがいのあるモニターです。
この価格帯のスタジオモニター・スピーカーが最優秀賞を取るのは、このサイトでMIPAをチェックし始めてから初めてだと思います。
そんなこともあり、このサイトでもコストパフォーマンスの高く、トータルバランスの良い「ADAM Fシリーズ」の解説ページを公開しました。国内で発売が開始になったのは2013年01月ですが、今後「ADAM F7」の注目度は高くなると思います。
Focal「SM9」とPMC「TwoTwo」がノミネート
尚、同スタジオモニター部門に、この年に他にノミネートされていたFocal「SM9」とPMC「TwoTwo」ですが、非常に高額です。
前年、最優秀スタジオモニターに選ばれたFocal「SM9」は2011年から3年連続で同部門に顔を出していますが、ペアで80万円を越えるため、一般的な宅録スタジオへ導入する方は稀でしょう。
また、2014年03月時点でのPMC「TwoTwo シリーズ」のラインナップは「twotwo.5」「twotwo6」「twotwo.8」ですが、国内主要ショップでの取扱いは確認できていないだけでなく、オススメするには情報が少なすぎます。
2010〜2012年 MIPAスタジオモニター
2012年度の受賞モニター・スピーカー
Focal「SM9」が最優秀賞
sE Electronics「The Egg」、Focal「SM9」、ADAM Audio「ARTist 3」がスタジオモニター部門にノミネートされたなか、2011年にもノミネートされていたFocal「SM9」が2012年度のMipa award「ニアフィールド・スタジオモニター部門」の最優秀賞を受賞しました。
2009年度に最優秀賞を受賞した「CMS 50」以降、Focalのモニターには世界中の人たちが魅了されている感じがしますが、メインモニターとしてもミッド・ニアフィールドモニターとしても使うことができるFocal「SM9」は高額です。
そのため、Focalのモニタースピーカで一般的な自宅スタジオに導入するのであれば、コンパクトな「CMS 50」か「CMS 65」です。
ADAM「ARTist 3」とsEE「The Egg」がノミネート
他に2012年のスタジオモニター部門にノミネートされたスピーカーは、ほとんど色付けなく高品位なサウンドを得ることのできるsE Electronics「The Egg」と「A7」がスタンダード・モニターになりつつある画像のADAM Audio「ARTist 3」です。
国内でもsE Electronicsの卵形の形状の2wayスピーカー「The Egg 150 MONITOR」の取扱いはありますが、20万を越えて高額なので、このサイトでは深くは掘り下げません。
USB接続が可能なADAM Audio「ARTist 3」は、FOSTEXの「PM0.4」がヒットしていたこともあり、よりしっかりとしたモニター環境を求める、小規模な宅録スタジをを構築しているユーザーを中心にヒットする可能性があるのではないかと個人的に思っていました。
ただ国内で「ARTist 3」の取扱店が出てきたのが2013年後半からと遅く、このサイズのスタンダードモニターになるには厳しいかもしれません。
2011年度の受賞モニター・スピーカー
Mipa award 2011のスタジオモニター部門にノミネートされていたFocal「SM9」、Genelec「8260A」、Neumann「KH 120 A」のなかで、最優秀モニター・スピーカーに選ばれたのは3WayモニターのGenelec「8260A」です。
前年もノミネートされていたGenelec「8260A」ですが、ペアで100万円超えるので、宅録スタジオでの「DTM・DAWスピーカー選び」がコンセプトのこのコンテンツで紹介しても仕方がありませんので、このモニター・スピーカーの紹介はしません。
同部門に他にノミネートされていたのはFocal「SM9」とNeumann「KH 120 A」です。
Genelecは常連で、Focalも近年のMIPAの常連ですが、Neumann(ノイマン)の「KH 120 A」は老舗マイクメーカーが初めて開発したスタジオモニター・スピーカーです。
Genelec「8260A」とFocal「SM9」があまりにも高額すぎるということもあったのですが、個人的に一番気になったのはNeumann「KH 120 A」です。
4ポジションの低・中・高域のイコライザを搭載してる「KH 120 A」は部屋の特性に合わせたチューニングを効率良く行うことが可能なスピーカーです。
ただ現状だと個人的に「Neumann = コンデンサーマイク」というイメージが強く、2011年は「DTM・DAWスピーカー選び」という観点では外れ年です。
Neumann「KH 120 A」が「KH 120 Ⅱ」とリニューアルされて現在でも販売中です。
2010年度の受賞モニター・スピーカー
2010年度のMipa award「ニアフィールド・スタジオモニター部門」の最優秀賞を受賞したスピーカーはFocal「CMS 65」です。昨年の「CMS 50」の受賞に続き2年連続でFocalが受賞しました。
コンパクトな「CMS 50」と同じく、今回受賞した「CMS 65」もコンパクトなニアフィールド・パワードモニターで、リアルな音像イメージとスケール感を持ち、細部の再現力に優れています。
また「Mipa award 2010」の同部門にノミネートされていたスタジオモニターは、Genelec「8260A」とJBL「LSR2300」ですが、ペアでGenelec「8260A」は100万円超越え、JBL「LSR2300」は国内では情報不足なため、日本で自宅スタジオに導入する人は多分少ないと思います。
価格的に2010年度のMIPAで選ぶなら「CMS 65」ということになりますが、それでもペアで20万前後します。
2007〜2009年 MIPAスタジオモニター
2009年度の受賞モニター・スピーカー
2009年度のMIPAの「ニアフィールド・スタジオモニター部門」の最優秀賞を受賞したスピーカーはFocal「CMS 50」です。「CMS 50」はリアルな音像イメージとスケール感、そして細部の緻密かつ精細な再現力を持っているコンパクトなスピーカで、現場の要求に高い次元で応えて設計されています。
MIPA 2009の同部門にノミネートされたスピーカーはMIPA アワード常連のGenelecの小型モニター「6010A」とEventの「Opal」です。
どうしても日本国内だとユーザーが少ないので、それほどFocal「CMS 50」は話題にはなりませんが、コンパクトながら、低音にしても無理な感じがなく、非常にバランスの取りやすいスピーカーです。
また、とにかく小さいGenelec「6010」は場所を取らないだけでなく、このブランドのスピーカーのなかでは価格が安いので、比較的導入しやすいです。マイナーチェンジした後継モデル「6010BPM」が登場しました。
2008年度の受賞モニター・スピーカー
2008年度のMIPA アワードの「ニアフィールド・スタジオモニター部門」の「ベスト・スタジオモニター」にGenelec「8240A」が選ばれています。
大型スピーカーに匹敵する能力を持ち備えながらコンパクトサイズを実現したモニター・スピーカーGenelecの「8240A」は、制限されたDAWワークステーションでの設置環境においても活躍します。
また、KRK「VXT 8」とYAMAHA「MSP 7 Studio」がMIPA 2008の同部門にノミネートされています。
KRK「VXT 8」も、YAMAHA「MSP 7 Studio」も、2014年時点でも販売されていて、6畳クラスの部屋だと性能を活かしきれないかもしれませんが、自宅スタジオでも仕事レベルで対応することのできる非常に良いモニタースピーカーです。
2007年度の受賞モニター・スピーカー
2007年度のMIPAの「ベスト・スタジオモニター」はADAM Audio「A7」です。「A7」はかなりの高い評価を受けていて、個人的にもオススメのモニター・スピーカーです。
現在、レンジが「A7」よりも広くなった後継モデルのADAM「A7X」は定番のニアフィールド・スタジオモニターのひとつになっています。
またJBL「LSR4326P」と、Genelec「8200 シリーズ」がMIPA 2007の「ニアフィールド・スタジオモニター部門」にノミネートされています。JBLの「LSR シリーズ」は2006年度のMIPAにもノミネートされていて高い評価を受けています。