DTM・DAWソフトはパソコンを使った宅録スタジオでの音楽制作の中核で、ミュージック・ワークステーションとしては、「これ以上必要なものはない」というくらいに、ほとんど完成していると言っても間違いありません。
長きに渡りバージョンアップを続けてきた主要のDTM・DAWソフトは、MIDIとオーディオを同等に扱うことができ、作曲、編曲、打ち込み(プログラミング)、レコーディング、ミキシング、ミックスダウン、マスタリングまでを1本のソフトで行うことができます。
ほとんど完成しているDTM・DAWソフト
機能面では完成している
最近はどのDAWソフトも、バージョンアップのときに大幅な機能の搭載を行わないことからも、作曲からミックス、マスタリングまで行う「ワークステーションとしての機能」という点では完成しています。
もちろん、それぞれのプロセスで知識や技術を必要としますが、しっかりとしたDAWソフトで音楽制作をすれば、自宅の宅録スタジオでも、サウンドエンジニアに依頼するメジャー流通の作品は別ですが、市販の音楽と同等の作品を作ることができます。
メジャー・リリースでは、サウンドエンジニアが、今でもミックス、マスタリングまで行う場合が圧倒的に多いですが、AppleMusic、Spotify、Amazon Musicなどのサブスク配信のレベルだと、ツールが大きく進化したこともあり、自宅スタジオで最終工程のマスタリングまで行われて販売されている作品も珍しくありません。
望むことはPCの負担軽減と小さなバグの改善
個人的にDAWソフトへ機能面で望むことはありませんが、使用時のパソコンへの負担軽減と小さなバグの改善はお願いしたいです。
CPUをかなり占有するプラグインエフェクトを使用するときなどに、ホスト・コンピューターのCPUに負荷をかけずに作業することができる「ProTools HDシステム」のように、プロスペックのDAWソフトになれば良いと思っています。
現在は「DTM・DAW用パソコンの基準スペック」に記載しているPCならミックスダウンやマスタリングは、かなり快適に行うことができますが、重たいソフトシンセや、プラグイン・エフェクトを立ち上げると「フリーズしたの?」と疑いたくなるようなものも多々あります。
CPUをかなり占有するプラグインエフェクトを使用するときなどに、ホスト・コンピューターのCPUに負荷をかけずに作業することができる「ProTools HDシステム」のように、プロスペックのDAWソフトになれば良いと思っています。
Windows PC場合は各自の環境の問題もあり、仕方のない部分もありますが、作業に大きな支障はないものの、小さなバグの改善がされないままのDAWが、メジャーアップデートなどされると非常に複雑な気持になります。
最近のDAWソフトの傾向
さまざまな機能を統合するDAWソフト
個人的に一昔前のDAWソフトと一番大きく変わったと思うのは、MAGIX「ACID」、ABLETON「LIVE」、Apple「GarageBand」などに代表される、トラック制作に便利な「ループシーケンスソフト」の機能を主要DAWソフトが搭載したことです。
ほとんどのDAWソフトでは、Apple LoopsやAcidファイルをドラッグ&ドロップでソフトで読み込むことができ、ループのテンポも自動的に調整することがるようになりました。
また昔は「REASON」のような一つのソフト内にシーケンサー、ソフトシンセ、エフェクターを内蔵したソフトを「トラック制作用ソフト」、もしくは「オールインワン・タイプ・ソフト」と、個人的に分別していました。
しかし今ではメジャーなDAWソフトは「ループシーケンス機能搭載」「ソフトシンセをバンドル」をしているだけでなく「REASON」もオーディオを取り扱えるDAW化したこともあり、「トラック制作用ソフト」と「DAWソフト」を分別するのが難しくなりました。
コードトラックの搭載
上記してきたとおりサウンド・ワークステーションとしては、ほとんど完成しているDAWですが、2019年にこのページの記事をアップデートしたときの、次世代のDAWソフトのキーワードの一つとしてあげたのが「コードトラック」でした。
個人的にはあっても良いけど「別になくても良いのでは?」と思っていた「コードトラック」ですが、その考えは大間違いで、ペーパーレスで曲情報を一括して管理できるコードトラック搭載DAWは素晴らしいです。
現在も国内での多くのシェアを占めている「CUBASE」と「Studio One」は、高機能なコードトラックを搭載していて、慣れてしまうと、コードトラックなしの制作には戻ることができません。
コードトラックの便利さに気づいたユーザーは、コードトラック非搭載のDAWだと、乗り換えの検討にすら入らなくなってしまいますので、アップデート毎に無駄な新機能やプラグインを搭載するまえに、コードトラックの搭載を考えるべきです。
コード入力は作業の一環(2023年追記)
このページを更新している2023年、わたしは「Studio One 6.5」を使用していますが、「Studio One」のコードトラックは搭載時よりも進化しました。
本当に便利で「コードトラックなしの作業を考えることはできません。」というのは少し大げさかな?とも思いますが、コード入力は作業の一環となっています。
AI搭載が次世代のDAWソフトの注目点
次世代キーワード「AIの統合」
様々な分野で注目されて、2023年はAI(人工知能)元年になりましたが、次世代のDAWソフトのキーワードは「AIの統合」になるのではないかと思います。
音楽制作の効率性の向上と、クリエイターに新たな可能性をもたらすことを目的にしたAIをDAWに搭載することが最も注目すべき点です。
MAGIX「MUSIC MAKER 2024 PREMIUM」では、音楽の知識がなくても作曲することができる、AIでオリジナル曲を自動作曲する機能が搭載されています。
主要DAWに求められるのは制作サポート機能
一昔前は「Band-in-a-Box」のような自動伴奏機能を搭載するソフトが初心者には高評価でしたが、「自動伴奏」ではなく、とうとうAIによる「自動作曲」の時代が来ています。
AI自動作曲は「クリエイターなの?」という疑問はありますが、音楽制作のハードルを下げて、多くの人が音楽を生み出す機会を広げるというのも、AIの目的のひとつですので、これはこれで進展してゆけばよいと思います。
当然、「CUBASE」や「Studio One」などの主要DAWにAI搭載で求められるのは、自動作曲機能ではなく、AIをツールとして活用することができる作曲や編曲などの制作プロセスをサポートする機能です。