2012年春発売予定のアナウンスから、なかなか販売開始に至らなかったため、首を長くしてしていた方も多いと思いますが、MOTUの老舗DAWソフト「Digital Performer 8(DP 8)」が2012年11月に発売を開始しました。
ご存知の方も多いと思いますが、今バージョン8からWindowsにも対応してDPは「Mac純正DAWソフト」ではなくなりました。その「Digital Performer 8 Windows版」は2013年05月に発売開始になりました。
2009年のバージョン 7から約3年ぶりのメジャーアップグレードとなる今バージョンはWindowsに対応したということもあり、DPの歴史に残ることは間違いないでしょう。
Digital Performer 8の主な新機能
老舗DAWソフト「DP」の進化形
バージョン8が発表されてから、実際に発売されるまでの時間があまりに長かったため、テンションは流石に落ちましたが、しっかりと「DP 8」の注目の新機能を紹介したいと思います。
バージョン8の主な新機能は「64ビット対応」「Windows7対応」「Mac OS X Cocoaに100%対応」「15種類の新しいテーマ」「Punch Guard」「新しい17のプラグイン・エフェクト」「VSTとRewire対応」「プラグイン&プリセットマネージメント 」などです。
注目の新機能である「Punch Guard」は、パンチインとパンチアウトの前後をレコーディングしてくれる機能です。記録を残しておきたい前後の時間は設定することができます。
同時期に発売を開始した「Cubase 7」と「Sonar X2」の新機能のインパクトがあまりに強かったので、「Digital Performer 8」の「Punch Guard」は確かに地味に見えます。
またWindows定番のDAWソフトは「64ビット対応」「Windows 7 対応」「VST & Rewire対応」に関しても、かなり前に対応済みで、すでに「Windows 8 対応」の世界に入っています。
そのため、Windowsユーザーに与えるインパクトは弱いかもしれませんがDP8はニーズに合わせて、しっかりと進化したと言い切ることができます。
DP8 VST対応
Windows対応なら必須ということもあり、「Digital Performer 8」は「VST対応」となりましたが、Macユーザーで「VST対応」で拍手して喜ぶという方は、それほど多くはないと思います。
と言うのも主要のサードパーティー製のプラグインはMac OS X以降ではAUには対応していたので、あえて「DP」でVSTプラグインを立ち上げる必要がなかったからです。
個人的にもMac OS XにDAWシステムを移行してからのミックスダウン以降の作業は「ProTools」で行うようになったこともあり、DPは基本的にMIDIの打ち込み&編集が中心になり、プラグイン・エフェクト自体は、本当に最低限のモノしかDPでは使わなくなっていました。
MIDIはリアルタイムレコーディングとイベントリストでの編集を中心にDPで今でも作業しているので、ソフトシンセはもちろん立ち上げますが、定番の音源はAUに対応していますので、VST自体を意識することは、気づくとなくなっていました。
Mac版DPとVSTプラグインとの関係
ここでDPとVSTプラグインとの関係で思い出話をひとつ書いておくと、Mac OS9時代にAudio Easeの「VST Wrapper」で、当時話題のあった「Virtual Guitarist」あたりを「Digital Performer」で使用していました。
ただ、とにかく「VST Wrapper」を立ち上げるとMACの動作が不安定になり、フリーズを恐れてセーブを頻繁にしていた記憶が残っています。その時、使用していたのはOS9を起動することのできる最後のMACでした。
そんな記憶がありますので、もしOS9時代に「Digital Performer VST対応」だったら喜んでいたと思います。
2年連続でMIPAにノミネート
MOTU「Digital Performer 8」はElectronic Musician「Editors Choice Award 2013」を受賞しています。
また「MIPA2012」と「MIPA2013」の「レコーディング・ソフトウェア部門」にも2年連続でノミネートされました。
DP8搭載のプラグイン・エフェクト
ギター用のエフェクターを中心に「Digital Performer 8」では17種類のプラグイン・エフェクトが新搭載されました。新しいマスタリング用プラグインも搭載されています。
ギター用のプラグイン・エフェクター
前バージョンの「Digital Performer 7」でもそうでしたが、「DP8」でもギター用のエフェクターに気合が感じられます。
ギター用のアンプシミュレーター「Soloist」と「ACE30」を目玉に「Springamabob」「Analog Delay」「Analog Flanger」「Hi-Top Booster」「Clear Pebble」「Dyna-Squash」「Analog Phaser」などストンプで「DP8」の新搭載プラグインの半数以上を占めています。
また「Digital Performer 7」で搭載されて好評だったギター用のスピーカーキャビネット・シミュレーター「Live Room | G」のベース用「Live Room | B」も「DP8」に新たに搭載されました。
マキシマイザー「Spatial Maximizer」
もうひとつ「Digital Performer 8」で搭載されたプラグイン・エフェクトのことで書いておくと、マルチバンドEQ + ダイナミクス「Dynamic Equalizer」とM/Sコントロール・マキシマイザー「Spatial Maximizer」も非常に面白いと思います。
特にマキシマイザー「Spatial Maximizer」はステレオミックスをセンターとサイドにステレオ信号を分割し5バンド EQ とコンプレッサーでコントロールすることができるマスタリングツールです。
センターにはベースエンハンサーやドライブが装備されているので低域をコントロールすることができ、サイドにはハイパスフィルターが装備されているので高域をコントロールすることができます。
尚、ステレオミックスだけでなく「Spatial Maximizer」は個々のトラックにも使用することができます。
DP8の17のプラグイン・エフェクト
上記で紹介したものも含めてバージョン 8の「Digital Performer」で追加された新しいプラグイン・エフェクトの全部を書き出すと「Dynamic Equalizer」「Precision Delay」「Spatial Maximizer」「De-Esser」「Subkick」「Springamabob」「Ensemble Chorus」「ACE30」「Soloist」「Live Room | B」「Live Stage」「Analog Delay」「Analog Flanger」「Hi-Top Booster」「Clear Pebble」「Clear Pebble」「Dyna-Squash」です。
Digital Performer 8のポイントと詳細スペック
DP8セレクトポイント
今回のバージョン 8のアップグレード自体、「Windows対応」が、やはりメインだと思いますし、今バージョンの「Digital Performer」はそのことを無視して語ることはできません。
個人的にはAppleの「LogicPro」と価格競争するのは無謀なので、「DP」のWindows参入には非常に喜んでいます。「DPは生産完了するのではないか?」と思っていたくらいなので、Windowsの世界への参入は正解だと思います。
DP8とMacユーザー
AppleのMac純正DAWソフト「LogicPro」がダウンロード版で1万円台で購入することができる現状において、Macの世界で新規ユーザーを「Digital Performer」に取り込むというのは、価格差を考えると正直難しいと思います。
ただし、バージョン 7以前のDPユーザーの方は迷わずバージョン 8を導入しても問題ないと思います。
もちろん3年ぶりのアップグレードということも理由のひとつですが「Digital Performer 8」は充分に魅力のあるアップグレードです。
DP8で追加されたプラグインは、なかなか魅力的ですので、エフェクター目的でバージョンアップというのもありだと思います。
DP8とWindowsユーザー
最も注目が集まった、気になっている方も多いWindows版ですが、2013年05月に販売が開始されたばかりなので、ユーザーの同行というのは「未知数」です。(この記事は2013年05月に作成しています。)
そこで「Digital Performer 8 Windows版」に興味のある方に、「DP」のセールスポイントを簡単に書いておきます。
バージョンアップの際のインパクトという点では、Windows定番の「Cubase シリーズ」と「Sonar シリーズ」のほうが強いです。他社のDAWソフトに比べて時代遅れと言われれば、その通りだと思います。
それでは、なぜプロが長期に渡り「Digital Performer」を愛用するのかと言うと、DAWソフトは、あくまでも音楽制作ツールですので、バージョンアップの際はインパクトよりも楽曲制作における安定感と作業効率の良さを求めています。
もちろん慣れも大きいですが、その点において「Digital Performer」は非常に優れていて、本当に直感的に音楽制作に集中することができます。
Electronic Musicianの「2011 Editors’ Choice award」で「DP 7.2」が「Best DAW award」を受賞したときに「イロイロなDAWソフトを使用したけど、結局DPに戻ってきた」というコメントを目にしたことがありますが、それは納得できるものです。
個人的に良く使用している機能をあげると、MIDIエディットであったり、まるで、MIDI編集感覚で直感的にリアルタイムに作業することのできるボーカル・トラックのピッチ編集などは、本当に抜群の操作性です。
そして、世界的に定評のあるMOTUのオーディオ・インタフェイスや「MIPA2013」の「Software Instruments部門」の最優秀賞を受賞したユニバーサル・サウンドワークステーション「MachFive 3」との併用も同メーカーということもあり、安定感&安心感があります。
Digital Performer 8と他のDAWソフト
完成度の高いWindowsのDAWソフト
Mac版の「Digital Performer 8」と、ほとんど同時期の2012年11月〜12月に発売されたWindowsのDAWの世界で多くのシェアを占めるSteinbergの「Cubase 7」とCakewalkの「Sonar X2」のデジタル・オーディオ・ワークステーションとしての完成度は非常に高いです。
また「MIPA2013」の「レコーディング・ソフトウェア部門」の「Cubase 7」と「DP8」を押し退けてウィナーとなったPresonusの「Studio One」(Mac/Win対応)もシェアを確実に増やしてきています。
それらのことも踏まえると「Digital Performer 8でWindows対応!」と大きく発表してから、正式リリースまで1年以上待たせてしまったのは購買意欲という点はもちろんですが、技術的な面で不安を与えたという点でも痛手かもしれません。
それでも個人的に「DP」応援団の一人ですので、「Mac専用の看板」を取り除いた「Digital Performer」に多くの方に一度は触れて欲しいと思います。プロユースの人間を中心に「DP」を手放さないのには、それなりの理由があります。
後、知らない方も居ると思いますので簡単に書いておくと、Steinbergはヤマハの系列、Cakewalkはローランドの系列です。DTMの登場前から音楽制作のハードウェアの世界で凌ぎを削ってきたヤマハとローランドなので、代理店を介している「DP」よりも宣伝が上手です。
MacからWindowsへの乗り換え
パソコン本体自体、WindowsのほうがMacよりも自由度が高いので、現在Macユーザーの方がWindowsへ乗り換えというのはアリだと思います。
Windowsは基本的に春・夏・秋・冬で新モデルを投入してきますが、Macは競合がいないので、モデルチェンジにも非常に時間がかかります。
購入するタイミングが悪いと、最悪な場合は、購入してから一ヶ月も経たないうちに、新モデル発表というのも、よくある話です。
基本的にパソコンが生活の一部になっている方が多いのは事実です。そのパソコンを壊れてから買い換えるという方が多いなか、このMac本体の状況はせつないものがあります。
使いたいソフトによってパソコンの選択の幅の狭さをなくすには、メーカーに任せるよりもユーザー側で改善して行くほうが長い目で見たときに得策です。
音楽制作の用途ではないのですが、わたし自身も「Digital Performer 8でWindows対応」を機に、2012年12月にBTOでWindows機種を購入したので、試しに「Sonar X2 Producer」(輸入版です。)をはじめWindows用に周辺機器などイロイロDAWツールを購入してみました。
時間がなくて、まだ使い込んでなく、やはりMac中心の作業になっていますが、メニュー画面や操作性等に違和感がなければ「Digital Performer」もWindows版に乗り換えようと思っています。