Steinberg(スタインバーグ)は、2023年11月に、 DAWソフトウェア『Cubase シリーズ』の最新バージョンである「Cubase 13」を発表 & リリースしました。
ユーザーのニーズや要望を踏まえ「ユーザーが創作モードに⼊っているときに、アイデアや作業の流れを⽌めないこと」が最優先されたバージョン 13のラインナップは最上位グレード「Cubase Pro 13」 、ミッドレンジ・グレード「Cubase Artist 13」、エントリー・グレード「Cubase Elements 13」となります。
大きな目玉はなく、派手さみたいなものはありませんが、「Cubase 13」は、ワークフローの改良と、新しいクリエイティブな機能のバランスの取れたメジャーアップデートです。
Cubase 13 グレード別の新機能
Steinbergの公式サイトの新機能のページが、ゴチャゴチャしていて、ポイントがつかみにくいので、Pro・Artist・Elementsのグレード別にCubase 13の新機能を紹介してゆきます。
Pro/Artist/Elements共通のCubase 13の新機能
機能のアップデート
01.Cubaseのミキサー 「MixConsole」 のGUI(グラフィック) と機能が刷新され、プロジェクトウィンドウとデザインが統⼀されました。
02.キーエディターとドラムエディターのMIDIエディターにも「範囲選択ツール」が搭載され、範囲をスムーズに選択することができるようになりました。
03.プロジェクトウィンドウに新しく設置された「チャンネルタブ」で、アレンジ画⾯を⾒渡したまま、チャンネルのミックスうことができるようになりました。アレンジ画面から離れずに、プロジェクトウィンドウ上で、素早くチャンネルのミックスを行うことができます。
04.コードパッドが⼤きく改良され、クリエイティブなコード進行を、より簡単に見つけることができるようになりました。
05.サンプラートラックに新しいスペクトラルワープモード搭載され、大胆な編集や強力なエンベロープの作成を行うことができるようになりました。
06.スタートモードで、再生開始の場所をワークフローに応じて柔軟に設定することができるようになりました。
07.トランスポートバーにタップテンポ機能が搭載して、プロジェクトのテンポを簡単に調整できるようになりました。
08.MIDI 2.0 が採用した幅広い機能拡張に対応しました。対応したのは、高解像度のベロシティ、CC、アフタータッチ、ピッチベンド、ポリプレッシャーデータなどです。
追加された音源
09.34インストゥルメントと140アーティキュレーションを5GBのライブラリーに凝縮した、軽快に動作するフルオーケストラ・ライブラリー「Iconica Sketch」を新搭載しました。
10.ロイヤリティーフリーのプレミアムなボーカル・サンプルを提供する「91Vocals」と、アナログを愛するメーカー「Touch Loops」による新しい5つのサンプルパックを付属しました。
Pro/Artist共通のCubase 13の新機能
ボーカル・マルチプラグイン「VocalChain」
ボーカル・マルチプラグイン「VocalChain」が搭載されました。「VocalChain」では、プラグインはボーカルのそれぞれの処理に特化したユニットを揃え、録⾳したボーカルトラックを素早く仕上げることができます。
以下で紹介している新プラグイン「VoxComp」「Black Valve」「EQ-P1A」「EQ-M5」は、「VocalChain」内でモジュール・エフェクトとして使用することができます。
ボーカル専⽤コンプレッサー「VoxComp」
VocalChain の⼀部としても単体プラグインとしても使⽤できるボーカル専⽤コンプレッサー「VoxComp」は、ボーカルの輪郭やトランジェント、表現⼒に妥協せず、適切にコンプレッションを適⽤することができます。
ボコーダー・プラグイン「Vocoder」
最⼤ 24 フィルターバンド、サイドチェーン⼊⼒、詳細なコントロールを搭載し、王道のロボットボイスやアナログフレーバーを加えることができるSteinberg のボコーダー・プラグイン「Vocoder」 が復活しました。
ProのみのCubase 13の新機能
モデリングコンプレッサー「Black Valve」
伝説のクラシックなハードウェアの名機コンプレッサーをモデリングしたプラグイン・エフェクト「Black Valve」を搭載しました。「Black Valve」はサウンドに温かみと個性を加えてくれるチューブ・コンプレッサーです。
ビンテージEQ「EQ-P1A」「EQ-M5」
Pultecのクラシック・イコライザーをモデリングした「EQ-P1A」と「EQ-M5」 が、Cubase Pro 13のみに新搭載されています。コンプレッサーハードウェアの名機をモデリングした「Black Valve」と同様に「EQ-P1A」と「EQ-M5」もサウンドに温かみと個性を加えれるプラグイン・エフェクトです。
MIDI機能の拡張
作曲・アレンジのワークフローを効率化するMIDIエディターが拡張されています。範囲ツールは Cubase Artist/Elements にも搭載されましたが、キーエディター/ドラムエディターでの複数のパート編集が「Cubase Pro」のみに搭載されています。
また、バージョン 13では、ステップ⼊⼒機能もさらに強⼒になり、MIDIコントロールチェンジの記録もシンプルに編集しやすくなっています。
Cubase Pro 13のアップデート&アップグレイド価格
無償バージョンアップ(グレースピリオド)
Cubase Pro 12、Cubase Artist 12、Cubase Elements 12 や、それ以前のバージョンを2023年08月23以降にアクティベートされた人には、無償にて「Cubase 13 アップデート」が提供されます。
Proの販売価格とアップデート価格
最上位版の「Cubase Pro 13」の新規購入の販売価格は69,300円。Cubase Pro 12からのアップデート価格は13,200円。Cubase 4 ~ 7.5、Cubase Pro 8 ~ 11ユーザーは24,200円です。
下位グレードからCubase Proへのアップグレード価格
ミッドレンジグレード 「Cubase Artist 13」からは29,700円。「Cubase Artist 6~12」からは39,600円。エントリーグレード「Cubase AI」「Cubase Elements」からは60,500円で「Cubase Pro 13」へアップデートすることができます。
Cubase Pro 13のアップデートのポイント
新規購入は約7万円
物価高の影響もあり「Cubase Pro 13」は、バージョン 12に比べると 10%くらい値上がり、約7万円となりましたが、Apple や他のメーカーも値上げしていますので、過剰な値上げには感じません。
ただ、新規購入の販売価格は¥69,300ですので、Cubase初心者の人に、いきなりの最上位版は不用意にオススメすることはできません。
まずはエントリーグレードや、ハードウェア付属の「Cubase AI」で、自分に操作性が合っているかを見極めてから「Cubase Pro」へのアップグレードを検討したほうがよいです。
仕事で「Cubase Pro」使用している人
アップデート価格がバージョン 13は値上がっていて、収入増と物価高のバランスの悪さが問題になっている日本では、当然不満を持つ人が特に多いと思いますが、アップデート価格に関しては許容範囲だと思います。
仕事で「Cubase Pro」をメインDAWとして使用しているプロの人は、経費で落とせますし、ワークフローが改良されて、使いやすくなっていることは間違いありませんので、仕事で曲の納品が一段落してから、バージョン 13へアップデートしてもよいと思います。
楽曲コンペ組やサブスク配信組
音楽の専門学校などの客寄せの楽曲コンペではなく、作家事務所から情報を受けて楽曲コンペに参加していても、勝率があまりよくない人や、サブスク配信で利益をそこそこ出せている人などは、現バージョンの「Cubase Pro」に不満がないのなら、無理にバージョンアップする必要はないと思います。
次世代を感じさせたり、次世代につながる音楽制作に比重を置いたバージョンアップではないので、24,200円のアップデート価格だと「Cubase Pro 10」あたりからのバージョンアップだとトントンかな?というのが個人的な感想です。
ハードウェアの名機をモデリングしたプラグインがバージョン13で搭載されましたが、最上位の「Cubase Pro」を使うくらいのユーザーは、すでにPultecのイコライザーなどは、サードパーティー性で間違いなく所有しているはずです。
楽曲コンペに参加している人や、サブスク配信で利益を出している人は、複数のメーカーの Pultec EQを所有していて、もうお腹一杯の人も多いはずですので、「Proのみ搭載」と言われても目玉になるはずもありません。
Cubase Pro 13のバージョンアップの評価
次世代を感じさせて欲しかった
2023年10月18日にYAMAHAがリリースしたオーディオデータをVOCALOID6専用のAIボイスバンクの歌声にリアルタイムに変換することができる「VOCALO CHANGER PLUGIN」みたいな次世代を感じさせるプラグインを「Cubase Pro 13」に搭載するかな?と期待していましたが、難しかったみたいです。
ユーザーの声も反映されたバランスの取れた堅実なバージョンアップではありますが、「Cubase Pro 13」には次世代を感じさせて欲しかったというのが率直な感想です。
AIの分野でボイスチェンジャー系の進化は速いこともあり、「VOCALO CHANGER PLUGIN」を次期バージョンの「Cubase」に搭載しても、その精度が周回遅れになっている可能性が強いので、今バージョン 13で搭載してほしかったです。
MIDI 2.0 が採用した機能拡張に対応していますが、制作現場にいるクリエイターたちの次世代のキーワードは「AI(人工知能)」で、MIDI 2.0ではないです。
2020年に少し話題になったMIDI 2.0ですが、説明を見たときワクワクしませんでした。曲作りをしているとは思えない技術者やレビューアーとは違って、曲作りを中心の生活をしているクリエイターは、実用レベルになるまでは規格の話には興味はあまりないです。
VST 2はCubase 13で使えるのか?
2022年01月に「24ヶ月以内に、Steinbergのホスト・アプリケーションとプラグインは VST 3 互換性のみを提供する」とVST 2 終了の発表がされていたので、VST 2が「Cubase 13」で使用できるか不安に思っている人もいるかもしれませんが、バージョン 13では、まだ使用することができています。
ただ、確実に廃止されますので、VST 2プラグインの使用は徐々に控えていったほうがよい気がします。「Studio One 6.5(2023年11月時点での最新バージョン)」でも、数は多くないですが、相性が悪くて強制終了になったり、立ち上がらなくなったVST 2プラグインもあります。
バージョン11/12のユーザーだとアップデート価格が、価格に見合っているとは言いにくいですが、DAWソフトとして操作性や信頼性などは申し分ありません。
最上位グレード「Cubase Pro 13」 、ミッドレンジ・グレード「Cubase Artist 13」、エントリー・グレード「Cubase Elements 13」の詳細スペックや最安値情報に興味のある人は、以下の「Cubase 13シリーズの詳細スペックと最安値情報」で確認してください。