Celemony(セレモニー)の「Melodyne(メロダイン)」は、競争が激しく、しのぎを削っていたボーカルのピッチ補正の分野で、圧倒的な使いやすさを武器に勝者となった定番のボーカルピッチ補正ソフトです。
ACID、Studio One、Digital PerfomerなどのDAWソフトに、エントリーバージョンの「Melodyne Essential」が標準でバンドルしていますので、すでに一度は「Melodyne」を使用したことがある人も多いと思います。
その点も踏まえて、ここでは、上位版へのアップグレードを考えている人にも参考になるように「Melodyne」のことを書こうと思います。
Melodyneの特徴
音楽的にリアルタイムにピッチ補正
Celemony(セレモニー)のピッチ補正ソフト「Melodyne(メロダイン)」はANTARESの「Auto-Tune」と同様にボーカルのピッチ補正の世界では定番のソフトです。
ボーカルをはじめとするさまざまなパートのオーディオデータをMIDIを編集する感覚で「ピッチ」「フォルマント」「タイミング」「音量」などを音楽的にリアルタイムにピッチをコントロールをすることができるのが「Melodyne」の特徴です。
また単に音程の悪い箇所の修正といった目的だけではなく、既存のオーディオデータからまったく別のバリエーションを作ることもできます。
例えば1つのボーカルパートから複数の別パートを作成といったハーモニーアレンジを施したり、コーラスグループを作ったりというようなことも「Melodyne」は簡単にすることができます。
DNA(Direct Note Access)テクノロジー
Mipa award 2009で「Most innovative product」を受賞したCelemonyのDNA(Direct Note Access)テクノロジーはオーディオ素材に含まれる和音(ポリフォニック)の各音を個別に編集することができるすごい技術です。
はじめてこのDNAテクノロジーが搭載されたCelemony製品は、2009年に発売を開始した「Melodyne Editor」です。
ARAでDAWの一機能として取扱える
Melodyneはスタンドアロン、VST、AU、AAX プラグインとして使えるほか、ARA(Audio Randam Access)により、DAWの一機能として使うことができます。
ARAはあるとないでは大違いの便利な機能なため、どちらかと言えば、ARAの搭載に腰の重かったように感じられた Steinberg「Cubase」や、MOTU「Digital Performer」も、最新のARA 2に現在は対応しています。
補足として書いておくと、Steinbergが2019年06月リリースの「Cubase 10.0.30」で、MOTUが2022年07年リリースの「Digital Performer 11.2(DP11.2)」で、ARA 2に対応させています。
順調なアップデートで進化
メーカーが「Celemony 史上最も広範なアップデート」と表現している「Melodyne 4」が2016年に、歯擦音のコントロール、フェードツール、コード検出とコードトラックなどを搭載した「Melodyne 5」が2020年にリリースされ、さらに使いやすい優れたピッチ補正ツールに進化しています。
Melodyneの各エディションの比較
機能範囲が違う4種類のエディションが「Melodyne」にはあり、下から「Essential」「Editor」「Assistant」「Studio」となります。
DNA(Direct Note Access)テクノロジーを搭載し、ポリフォニックに対応しているのは「Melodyne Studio」「Melodyne Editor」ですが、どのエディションにも同じアルゴリズムと音色生成技術が採用されています。
「ノート単位の音楽的な操作」「ノートアサインの微調整」「メロディ、パーカッション、複雑なオーディオ素材向けアルゴリズム」「ピッチ、タイミング、ボリュームのインテリジェントなマクロ」「コード機能」は、全エディション共通の機能となっています。
Melodyne Studio
Melodyneの機能のすべてを搭載する最上位版になるのが「Melodyne Studio」です。当然ですが、下位バージョンとなる「Editor」「Assistant」「Essential」でできることはすべてできます。
この「Melodyne Studio」のみに搭載されるのは、「マルチトラッキング」「マルチトラックノート編集」「複数のトラックにまたがるマクロ」「参照トラックにクオンタイズ」「サウンドエディター」です。
わたしは「Melodyne 5 Studio」のユーザーですが、コードグリッドとコードトラックのおかげで、効率的な作業ができるようになり、ハーモニーの生成や編集に時間がかからなくなりました。(他のソフトに移れないレベルの時短です。)
最新バージョンは「Melodyne 5 Studio」です。
Melodyne Editor
Assistant、Essentialの上位版となる「Melodyne Editor」から搭載されるのは「DNA Direct Note Access」「コード内の各ノートの編集」「拡張スケール機能」「拡張テンポ機能 」です。
最も大きいのは、このエディションからの搭載となるピアノやギターなどのポリフォニック楽器向けのDNAアルゴリズムです。
コード内の個々の音にアクセスできるので、読み込んだサンプルの修正や、楽曲のコードに適応させることなどもできてしまいます。
最新バージョンは「Melodyne 5 Editor」です。
Melodyne Assistant
下位エディションEssentialの上位版となる「Melodyne Assistant」には、 「オーディオ – MIDI変換」やフォルマント、ボリューム、タイミング、歯擦音などをコントロールすることのできる機能が搭載されています。
オーディオデータをMIDIデータへ書き出すことができるのと、Melodyne内で、一音単位で、ボリュームや歯擦音のエディットをすることができるのが特徴です。
Direct Note Accessは非搭載で和音の編集はできないものの、お手頃価格が魅力の「Melodyne Assistant」です。
最新バージョンは「Melodyne 5 Assistant」です。
Melodyne Essential
さまざまなDAWソフトにも標準でバンドルしていますので、かなりの人がシリーズ入門版の「Melodyne Essentia」を使用しているのではないかと思います。
DNA以外の全アルゴリズムとMelodyneのメインツールを搭載する「Melodyne Essentia」は、ピッチ、タイミング、デュレーション修正や、ノート分割などの基本機能を使用してボーカルを編集できます。
音楽性に優れ、素早く簡単に操作することが「Melodyne Essentia」でも可能ですが、あくまでもMelodyneを使用した編集環境の第一歩を提供している位置づけです。
Melodyneは、一音単位で「ビブラート」「歯擦音」「ボリューム」の調整ができる機能が非常に素晴らしく、作業の時短ができるソフトなのですが、基本ツールのみを搭載する「Melodyne Essentia」では、それができません。
そのため、長く使ってゆく可能性のある人は、差額を支払うだけで上位エディションへアップグレードすることができますので、Melodyneと相性が良いと感じたら、早めの上位エディションへのアップグレードがオススメです。
最新バージョンは「Melodyne 5 Essential」です。
Celemony(セレモニー)の「Melodyne シリーズ」の詳細スペックや価格情報に興味のある方は以下の「Melodyneシリーズのスペックと価格情報」で確認して下さい。「Direct Note Access」対応の製品は「Melodyne Studio」と「Melodyne Editor」です。