2015年08月に登場したIK MultimediaのT-RackSシリーズ「Stealth Limiter(ステルス・リミッター)」は音楽表現を失うことなくラウドネス感を実現することのできる新世代を見せたマスタリング・プラグインです。
WAVESをはじめとする、このサイトで紹介しているマスタリング・プラグインはすべて所有していますが、クリアなままにRMSを稼ぐという点では、わたしの所有しているプラグインのなかでは2016年時点では最強でした。
T-RackS Stealth Limiterの特徴
自然で透明なサウンド
冒頭に最強という言葉を使いましたが「Stealth(ステルス)」とは「透明」という意味です。その名の通り、素材を壊すことなく自然で透明なサウンドを得ることのできるのが「T-RackS Stealth Limiter」です。
4つの動作モード
基本的にはINPUTとOUTPUTを設定するだけの簡単操作で音圧を稼ぐことができますが、このリミッターには「TIGH」「BALANCED」「HARMONICS 1」「HARMONICS 2」の4つの動作モードが用意されています。
前にコンプやEQを使用すると思いますので、基本的には「TIGHTモード」で大丈夫ですが、少し圧縮したい場合は「BALANCED」を使用すると良いと思います。
また、アナログ・サウンドが欲しいときは「HARMONICS 1」、ミックスに少しパンチを加えたいときなどは「HARMONICS 2」を選択すると良いです。
ISPL機能で再生時のクリップを心配から解放
マスタリング時の音圧であったりRMSで悩んでいる人は、上記の解説だけでも興味をもったと思いますが、「T-RackS Stealth Limiter」には「ISPL(インターサンプル・ピーク・リミッター機能)」が搭載されています。
ISPLをOnにすれば、CD、AAC、MP3プレイヤーでの再生時のクリップを心配する必要がなくなります。
その他にも処理前/後のサウンドを、同じ音量で比較しながら試聴することのできる「Unity Gain Monitor」や、22Hz以下の重低音をカットし不要なリミッター動作を回避することのできるハイパス・フィルター「Infrasonic filter」も搭載しています。
注意点は、ある程度スペックの高いPCを使用している人は、それほど気にする必要はありませんが、PCへの負荷が非常に高いです。
そのためミックスとマスタリングを切り離して、一度、2MIXを書き出したほうがストレスはないかもしれません。
Stealth Limiterのポイント
ファイナル・マスタリングプラグインの復権
マスタリング時に「WAVES L2」以降は、わたしの周りでファイナル・マスタリングプラグインとしてT-RackSを使用する人を見かけなくなりましたが、「T-RackS Stealth Limiter」でIK Multimediaのファイナル・プラグインの復権があるかもしれません。
<追記 2019年>
わたしは2016年02月から「T-RackS Stealth Limiter」を全曲ではありませんが、最終プラグインとして使用するようになりましたが、2019年時点ではあまり立ち上げること自体がなくなりました。
その理由を書けば、オススメのマスタリング用エフェクター現代版で書いたように、2017年の後半はマスタリング・プラグインがかなり熱くなりました。
マスタリング・プラグインも次の時代へ突入して、他製品が「Stealth Limiter」のマスタリング・リミッターとしての性能を越えてしまったということです。
IK Multimedia「T-RackS 5」に収録される「Master Match」も、確実に音圧レベルの点で次世代のレベルに到達しています。
それでも「Stealth Limiter」はマストアイテムではないものの、マスタリング時の選択肢のひとつとして持っていても良いプラグインです。
Stealth Limiter 収録製品「T-RackS MAX」
IK Multimediaの「T-RackS Stealth Limiter」は「T-RackS MAX」「Total Studio MAX」に収録されています。
IKMのソフトは単品で買うと数万円単位で損をして、確実に悔しい思いをしますので、絶対にはじめからバンドル製品で購入したほうが良いです。(痛い目にあっている人間なので強く強調します。)
尚、「Stealth Limiter」は「T-RackS Deluxe」には収録されていませんので注意が必要です。