2ミックスの音量を上げるプラグインとしての認識が強いSonnox「Oxford Inflator」ですが、個々のチャンネルで使用しても、サチュレーション効果であったり、パワーや存在感を加えてくれる、マスタリング以外にも使えるオールラウンダーの「魔法のプラグイン」と呼ばれるエフェクターです。
Oxford Inflatorの特徴
エンジニアも愛用した人気プラグイン
少ない音質の変化でナチュラルに音圧を稼ぐことのできるSonnox(ソノックス)の「Oxford Inflator」は多くのマスタリング・エンジニアやミキシング・エンジニアに愛用されていた人気のプラグイン・エフェクトでした。
音圧競争時代にラウドネスの効果がわかりやすかった「Oxford Inflator」は、マスタリングに悩んだアマチュアでも導入した人も多く、セールス的にも、間違いなくSonnoxの最大のヒットプラグインです。
最近は2ミックスの最終的な音圧上げで使用することはしていませんが、わたし自身も「Oxford Inflator」は、今でもたまに使用しています。
尚、2010年に公開した「ミックスダウン/マスタリングのガイド」のなかでは、マキシマイザーとして使用していました。
少ない音質の変化で音圧上げ
この「Oxford Inflator」の人気が出た理由は、非常に簡単な操作で音圧競争時代に無理のない全体の音圧を上げができたことがかなり大きいです。
当時の「ここまで2ミックスの音圧と迫力が出る」と言ったような音圧上げをセールス文句にしたマスタリング・プラグインのなかには、期待した効果が得ることが難しい製品も多数あました。
例えば、音が大きくなっても、音がカチンカチンに固くなってしまったり、アナログ感たっぷりで意図しない太い音になってしまうといった、高額な割には、音楽を聴いていて不自然で耳が痛くなる製品も多数ありました。
そんななかで、音質やダイナミックレンジを大きく犠牲にすることのない変化で、ラウドネスを高めることのできる「Oxford Inflator」と「WAVES L2」は他社の製品と一線を画した別物でした。
わたし自身もSony Oxford(Sonnoxの旧名称)時代に、このプラグインをPCに負荷をかけずに使用したくてTC Electronicの「PowerCore」を導入しました。
マスタリング時のファイナルプラグインは「Inflator」と「WAVES L2」のどちらかを使用するという時代もありました。
音圧上げ目的での「Oxford Inflator」に興味のある方は「ミックスダウン&マスタリングのガイド」の第4回「とりあえず2MIXの音圧を上げる」が非常に参考になると思います。
ソロ楽器やボーカル・トラックにも使用できる
マキシマイザーとしての使用目的で「Oxford Inflator」を導入した方や導入したいと思っている人も多いと思いますが、最終段階での音圧上げ用途だけでなく、存在感を出したいトラックなどに使用しても良い結果をもたらしてくれます。
現在は2ミックスの音圧上げで使用することはしていないと前述しましたが、アナログ機器のような暖かい音楽的なサウンドを得ることができるプラグインなので持っていて重宝します。
ソロ楽器やボーカル・トラックに存在感や柔らかさなどを与える用途や、ドラム・ミックスに迫力を出す際などに、コンプとはまったく異なる効果でトラックの存在感を高めてくれるので、たまに「Oxford Inflator」を使用しています。
Oxford Inflatorのセレクトポイント
WAVES L3との比較
「WAVES L3」と「Oxford Inflator」どちらが良いの?という質問を頂いたので、個人的見解で回答させてもらいます。
マキシマイザー用途のみで考えるなら「WAVES L3」がよく、マスタリング作業だけでなく各トラックにも使用したいのであれば「Inflator」です。
わたし自身はここ数年のマスタリング作業では「WAVES L3 シリーズ」を使用しています。L3 シリーズのまえに高品位なEQプラグインをインサートしてあげれば音圧上げの悩みからは開放されるのではないでしょうか?。
ただ、両プラグインとも1万台に値下げされているので(質問された方もそれで悩んだのだと思いますが)、同時に2つのプラグインを導入するのも良いと思います。
上記「WAVES L3」と「Oxford Inflator」の比較は2016年06月に書いたものです。マスタリング・プラグインが大きく進化した現在は、両プラグインを、最終リミッターとして使用することはありません。
はっきり言えば「WAVES L3」はお役御免ですが、自然な暖かさとキャラクターを追加することのできる「Oxford Inflator」は、現役エフェクターとして、充分過ぎるくらいに使うことができます。
Inflatorを収録するバンドル製品
3つのプラグインを収録する『Sonnox Enhance』、5つのプラグインを収録する『Mastering Collection』、7つのプラグインを収録する『Elite Collection』、5つのプラグインを収録する『Broadcast Collection』などに「Oxford Inflator」が収録されています。
上記したバンドルには「Inflator」と同時期のプラグイン「Oxford Dynamics」も収録される製品もあります。「Oxford Dynamics」は、確実に目に見える効果だった「Inflator」のような高評価は得ていませんが、アマチュア受けではなく、玄人受けするコンプ・サウンドだったので、プロのサウンドエンジニアには好評でした。
音の質感はコンプのなかでも上のランクですので「Inflator」と同様に、もっと評価されてもよかったコンプレッサーだと感じます。
今はキャンペーン中などは安くなりますが、単品でも、かなり当時は高額だったので、もう少し価格を抑えてくれれば、導入した人も、もう少しいたかな?とは思います。
そんなこともあり、個人的には「Oxford Dynamics」も収録されているSonnox バンドルがオススメですが、「Oxford Inflator」単品がキャンペーン中は、数千円で購入できるほど安いので、無理にバンドルを検討する必要はない気がします。
Inflatorの詳細スペック
今では生産完了となったTC Electronic「PowerCore」の記事を見直したときに、個人的に最も使った「Inflator for PowerCore」のことを真っ先に想い出しました。
以前は、PowerCoreか、RTAS環境でしか、「Oxford Inflator」を使用することができませんでしたが、現在では Native版も発売されています。
そのため、PowerCoreを持っていなくても、MacとWindowsのAudioUnits/VSTでも使うことができるようになりました。
Sonnox(ソノックス)の「Oxford Inflator」の詳細スペックに興味のある方は「Oxford Inflatorの詳細スペック&価格情報」でチェックして下さい。
Native版が登場したときもPowerCore版の「Inflator for PowerCore」よりも2万円以上価格が安かったですが、直輸入版の影響などもあってか「WAVESプラグイン」同様に、Native版はさらに値下げされています。