SM58でボーカル録音するDTM講座【前編】

SM58でボーカル録音するDTM講座 トップ画像01

DTM・DAWの音楽制作必勝講座で公開していたボーカル用の定番ダイナミックマイクである Shure「SM58」を使用した自宅スタジオでのDTM・DAWのレコーディング講座の前編です。

公開している内容は「音質と使えるボーカルトラック録音」「SM58以外のマイクの選択」「SM58が定番マイクの理由」です。

Shureの定番スタジオマイクの比較
定番のダイナミックマイク「SM58」と「SM57」や、コンデンサーマイク「SM27」などのShureのスタジオマイクを紹介しているページです。ライブにも適している「Beta 58A」や「Beta 87A」も紹介しています。

SM58の音質と使えるボーカルトラック録音

中高域が強調されたダイナミックマイク

SM58でボーカル録音 画像1
当サイトの「ボーカル録音に必要なマイク&ヘッドホン」あたりでも書いたと思いますが、これからDTMでのレコーディングを覚えてゆこうと思っている人には、ボーカル用に最適に調整されているシュア(Shure)の「SM58」は吹かれにも強いので、自宅でのボーカル録音用のマイクとしてオススメなマイクです。

左上の画像を見てもらえれば分かると思いますが、「SM58」の音質は中高域が強調されていて、抜けが良いサウンドが特徴のダイナミックマイクです。

取扱いも簡単で、自宅スタジオレベルでは充分な音質でレコーディングすることが可能ですが、マイクとの距離であったり角度によって、ダイナミックマイクは音質の変化があるので、「SM58」で安定したボーカル録音をするには、その辺りを必ず頭に入れておく必要があります。

ラインナップにはスイッチなしの「SM58-LCE」とスイッチ付きの「SM58SE」が現在ありますが、これは、好みでどちらでも良いです。スイッチなしだからといって壊れやすいということはありません。

Shure「SM58」の詳細スペック

比較すること自体がナンセンス

プロのレコーディング現場では、コンデンサーマイクを基準にしてボーカリストに合ったマイクがセレクトされます。「U87」や「U67」などのノイマン(Neumann)のコンデンサーマイクが業界での定番となっています。

Neumannの定番スタジオマイクの比較
スタジオ定番のNeumann(ノイマン)のコンデンサーマイクを紹介しているページです。スタンダード・マイク「U87Ai」をはじめ「TLM102」「TLM67」など、評価の高いNeumannのマイクをピックアップして紹介しています。

高音質のレコーディングを「SM58」ですることは無理ですか?という質問をもらいましたので、ここで個人的な見解を述べておきます。

予算や録音環境をはじめ、さまざまな制限のある自宅スタジオで、すべてが整っているプロのスタジオで使われている数十万円もする定番のコンデンサーマイクと、1万円前後の「SM58」を比較すること自体がナンセンスです。

使えるボーカルトラックを録音

SM58でボーカル録音 画像2
自宅でDAWソフトを使用したボーカル録音で重要なのは、制限のある予算と環境のなかで、DTMで使えるボーカルトラックを録音できるかどうかです。

しっかりとしたセッティングをしてマイクの持つ本来の性能を発揮させてあげることにより、使えるボーカルトラックを「SM58」で録音することができます。

そのためミックスやマスタリングを含めたトータルでの楽曲クオリティーが、人に聴かせても恥ずかしくないレベルに到達するまでは「SM58」で充分だと思います。

補足として書いておくと、ダイナミックマイクがプロのレコーディング現場のボーカル録音で、まったく使われないかというと、そういう訳ではありません。

曲やボーカリストの声質によってはダイナミックマイクのほうが向くこともあり、そんなときは「SM58」などのダイナミックマイクが使われます。

注意点として「SM58」のサウンドの特徴が、声質と重なってしまい逆に合わない人もいます。特にハイトーンボイスの人には向かない場合があるので、そのときは中高域がもう少しフラットな他のマイクを検討すべきだと思います。

SM58以外のマイクの選択

ダイナミックマイクにこだわる必要はない

ギターのアンプ録りなどで使われるSENNHEISER(ゼンハイザー)のダイナミックマイク「MD421」も、コンデンサーマイクでフィットしない場合はボーカル・レコーディングに使われます。

ただ「MD421」は金額がかなり高額になりますので、ボーカルの声質などの特徴から「SM58」が合わないのであれば、あえてダイナミックマイクにこだわる必要はありません。

定番になっていない同価格帯、もしくは価格の安い、他のダイナミックマイクを、無理に冒険してまで選ぶ理由とオススメする理由が見つからないので、コンデンサーマイクを検討するべきです。

現在は「スタジオマイク導入ナビ - おすすめボーカル用マイクの比較」で紹介していますが、低価格でも優れたコンデンサーマイクもありますので、ダイナミックマイクではなくコンデンサーマイクを導入したほうがよいと思います。

スタジオマイク導入ナビ - おすすめボーカル用マイクの比較
宅録スタジオでのオススメ定番のダイナミックマイクとコンデンサーマイクを紹介しています。紹介しているメーカはNeumann、Shure、AKG、Audio-Technica、RODEなどです。

エントリー用の自宅スタジオ向きのコンデンサーマイクの世界の定番は、ポップガードや6mのXLRケーブルも付属している、かつては1万円台で購入することができた RODE「NT1-A」でした。

しかし為替レートの変動で円安となっている現在では、低価格で高音質が売りだったRODEのコンデンサーマイクは高額となっているためオススメはできません。

現在のエントリー用のコンデンサーマイクの定番は間違いなく低価格で高音質を実現している Audio-Technica「AT2020」です。

Audio-Technica AT2020 - DTMボーカル用スタジオマイクの比較
Audio-Technica(オーディオテクニカ)の全世界でシリーズ累計販売数100万本を超えるコンデンサーマイク「AT2020」と、USBモデルの「AT2020」を紹介しているページです。女性ボーカル用のマイクとしても最適です。

他のマイクを選ぶとき

コンデンサーマイクが使える環境なら、多くの場合でボーカル・レコーディングにはコンデンサーマイクのほうが利点があるので、すでにファンタム電源を装備しているオーディオインターフェイスを利用している人は、コンデンサーマイクをチェックしたほうがよいと思います。

ひとつマイクを選ぶ際に覚えておいて欲しいのは、どんな高額なマイクでもミックスダウン時にコンプを掛けたり、EQで調整したりしますので、レコーディングの素の音をそのままで使うということはないということです。

どの製品でも定番であるものに対して不平不満を言う人がいますが、カラオケの2ミックスにボーカルを入れる程度の知識と技術しか持っていない人や、コンプやEQの知識を持っていない人のマイクに対する意見は、録音時のマイクの入力レベルの設定さえできていない可能性もあります。

そのためDTMで使えるボーカル・トラックのためのレコーディングという観点では、ほとんど参考にならないので真に受けないようにして下さい。

SM58が定番マイクの理由

プロフェッショナルが認めて定番となる

SM58でボーカル録音 画像3
SM58が50周年のときに書いた「今の時代でもSM58を選ぶ理由」を読んでもらえれば納得してもらえると思いますが、世界中で「SM58」が定番として認知されているのには、それなりの理由と実績があってのことです。

マイクだけでなく、スタジオモニターもそうですが、その分野のプロフェッショナルが認めて、そこから一般に広まって定番サウンドになってゆきます。

今の時代でもSM58をセレクトする理由 – SHUREの超定番ダイナミックマイク
定番のSHURE(シュア)のダイナミックマイク「SM58」は自宅でのボーカル録音用のマイクとしてオススメなマイクとして紹介され続けています。 近年ではオーディオインターフェイスを介さずに手軽にボーカル録音をすることのできるUSBマイクも人気

登場してからかなり経つので「SM58」が定番になった時期というのは分からないのですが、スタジオモニター・スピーカーの定番であるヤマハの「NS10-M Studio(テンモニ)」は、ボブ・クリアマウンテンという、超一流ミキシング・エンジニアが使い始めたことにより定番となり、生産完了した今でも、音楽クリエイターやサウンドエンジニアが使っています。

ダイナミックマイクとは関係ないですが、世界中で流行った映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let It Go」はボブ・クリアマウンテンのお弟子さんがミキシングエンジニアとしてクレジットされています。

定番の理由が分かるとき

定番のスタジオモニター・ヘッドホンなどでもそうなのですが、「定番」という言葉に過剰な期待をする人も多く、はじめて「SM58」を使用したときに「この程度?」と感じる人もいるでしょう。

定番製品を作った人や、実際使っている人の言葉を代弁するなら「現時点のあなたの音楽レベルがその程度」です。

自分の持っている技術や知識を疑わずに、先に製品を疑ってしまうと、マイクに限らず、どんな定番の製品も駄目ということになります。

格好から入ることももちろん重要ですが、一流のギタリストと同じギターを持って同じフレーズを弾いたからといって、音が同じにならないことは理解できると思いますが、それと同じことです。

Shure「SM58」が「なぜ定番ダイナミックマイクと呼ばれるのか」の理由が分かるのは、しっかりとマイクの性能を活かしてないからです。

DTMならボーカルのエフェクト処理まで、しっかりできるようになると、自分に「SM58」が合うにしても合わないにしても、そのときは「なるほど」と思うようになります。

たまに覗くと「Q & Aサイト」には、首を傾げたくなるような、あまりに無責任で無知な人の回答も多々あるので、その情報をもとには決断はしないほうがよいと個人的には思います。
SM58でボーカル録音するDTM講座【後編】
ボーカル用の定番ダイナミックマイクである Shure「SM58」を使用した自宅スタジオでのDTM・DAWのレコーディング講座の後編です。内容は「SM58で覚えてゆく」「音がこもったりキンキンする場合」などです。
タイトルとURLをコピーしました