音楽の分野だけでなく、いろいろなところで「AI」という言葉が使われるようになり、当たり前のように、それにちなんだ製品がたくさん発売される時代となっています。
ボーカロイドなどでお馴染みの歌声合成技術の世界も、人間らしい歌声を追求した「AI」の波が来ていて、次世代に突入しています。
2020年12月に商品版としては初めてリリースされた「Synthesizer V AI」は、DTMの世界では久々に大きな進化を感じさせるクオリティーです。また、2021年01月には「CeVIO AI」がリリースされました。
ライブラリのリリースも数多く予定されていますので、2021年が間違いなくAIを採用した歌声合成技術の「元年」と言っても間違いないでしょう。
<注意点>
歌声合成技術を使用する人には、主にキャラクターの声の可愛さを活かした「いかにもボカロ」という使い方と、「本物のボーカルの代わり」という二通りの使い方ががあります。
このページではセールストークなしで、「本物のボーカルの代わり」という点に着目して本音で記事を書いていますので、「いかにもボカロ」という使い方をしたい人には参考になりません。
Synthesizer Vの特集ページの公開を予定していましたが、ソフトの進化のスピードが速く、歌声データベースのリリースも多いです。
そのため、公開してもあっという間に旧情報となってしまうので「Synthesizer V 最新情報 – DreamtonicsのAI歌声合成ソフト」という形で新ページを公開しました。
以下は2021年に作成した記事で、Synthesizer Vなどは、本物のボーカルと聴き分けがつかないレベルまで大きく進化していますので、現在のAIボーカル事情とは違います。
Synthesizer Vの特徴とライブラリ
Synthesizer Vの特徴
Dreamtonicsの「Synthesizer V」は、従来のサンプルベースと近年話題で注目されている人工知能のハイブリッド手法を採用したエンジンを使用したボーカル・シンセサイザーです。
2020年12月に商品版としては初めてとなる新時代の歌声合成技術であるボーカル AI「Synthesizer V Saki AI」がリリースされ、そのクオリティーの高さに驚かれた人も少なくないと思います。
ベーシック版と最上位版「Synthesizer V Studio Pro」があり、最上位版はベーシック版より速く、よりレスポンシブな操作とレンダリングなどが実現されています。
ベーシック版よりも、さらに細かい歌声調整もできますが、AIに対応しているライブラリならベーシック版でも充分すぎるクオリティーのボーカルトラックを作り出すことができます。
個人的にPro版の最も大きなメリットはDAWソフトと同期ができることです。
Synthesizer VのAI対応ライブラリ
Synthesizer Vの歌声データベースには、AI版と標準版とがありますが、2021年04月時点でAIに対応しているのは「Saki」「小春六花」となります。
わたしも実際に「Synthesizer V Saki」を所有していますが、AI版と標準版では別物と考えて間違いありません。
「Saki AI」のクオリティーは非常に素晴らしく、新しい時代の突入したと言っても大げさではありません。
公式デモを聴けばわかると思いますが「小春六花 AI」に関しては、「VOCALOID 5」を凌ぐとは言えないレベルです。
Synthesizer V AIの各ライブラリの詳細 & 価格情報
CeVIO AIの特徴とライブラリ
CeVIO AIの特徴
深層学習(ディープラーニング)等の最新AI技術を採用した「CeVIO AI」は人間の声質・癖・歌い方を高精度に再現します。
より人間らしいリアルな歌声を再現するだけでなく、操作性に優れた「CeVIO(チェビオ)」のGUIでスムーズなボーカルトラックの生成 & 編集が可能です。
歌声合成技術ソフトとしての歴史もあり、一部ユーザーからは高評価を得ていたのが「CeVIO」ですが、人気やユーザー数などはヤマハの「VOCALOID」の影に隠れていたというのが正直なところです。
しかし、2021年01月に開発元のテクノスピーチがリリースした人間味のある歌声をリアルに再現する「CeVIO AI」に注目した人も少なくはないはずです。
CeVIO AIのライブラリ
歌声をリアルに再現するソングボイスと、話し声をリアルに再現するトークボイスがありますが、ソングボイスは2021年04月現在、2021年01月にリリースされた「CeVIO AI 結月ゆかり 麗」、2021年02月にリリースされた「CeVIO AI 東北きりたん ソングボイス」です。
尚、CeVIO AI用ボイスは、旧バージョンとなる「CeVIO Creative Studio」では利用することができませんので、エディタがセットになった製品がオススメです。
ボーカル AI の評価と展望など
凄い次元まで来ているボーカル AI
本物のボーカルの代わりに「歌声合成技術ソフト」を考えている人にとっては、「Saki AI」に関しては凄い次元まで来ています。
事前に「歌声合成技術ソフト」を使用していることを伝えないと、「リアルボーカルなのか?歌声合成技術のボーカルなのか?」を一般リスナーは多分聴き分けられないレベルの高さです。
同時期にリリースされた「初音ミクNT」は、人間味のあふれるAIとは逆方向に行っているだけでなく、2021年04月時点で完成されていない状態でのリリースですので、失礼ですが現時点でソフトとして評価できるレベルではありません。(今後、飛躍的に進化する可能性もありますので、現段階では評価しないほうが良いでしょう。)
VOCALOID:AIの動向が気になる
無償版を除くと現在、歌声合成技術ソフトは「Synthesizer V AI」と「CeVIO AI」の2製品ですが、当然気になるのはディープラーニングの手法を取り込んだヤマハ「VOCALOID:AI」の存在です。
AI 美空ひばりで、その技術の高さを特番や紅白で世間に認知させた「VOCALOID:AI」が、いつ製品化されるかはわかりませんが、次のバージョンのVOCALOIDは時代の流れからディープラーニングの手法を取り込んでくると考えられます。
「VOCALOID 5」のリリースのときと同様に告知なしでリリースされる可能性もあるので、ヤマハの動向に注目したいと思います。
<後記:ボーカル AI 歌声合成技術の比較>
Synthesizer V Saki AI以外は本物のボーカルとの比較という観点だと、デモを聴く限り「VOCALOID 5」のリアルさを越えているとは言い難いという感想を持った人がほとんどだったのではないでしょうか。
メーカーはユーザーにボーカロイドを含む旧製品ではなく、リアルボーカルと比較してもらいたいのであれば、レコーディングで生のボーカルのディレクションができる人にデモソングを頼まないと「次世代」をユーザーに印象づけることは難しいかなと思います。
Saki AI以外はデモソングでは損している感じは否めませんが、そうは言っても「Synthesizer V AI」と「CeVIO AI」は、しっかりとした製品です。
実際に使用した人間だけがわかると思いますが、無駄な時間を掛けずにリアルなボーカルトラックを作り出すことができます。